■田村明「現代都市・まちづくり講座」
−都市の過去・現在・未来−
第一部都市の原理(T〜Yまで予定)
T都市の発生とその意味−都市文明を問う(修了)
U世界の都市とその興亡−都市文明の歴史−比較都市論(修了)
V近代都市の発生と課題(修了)
Y都市問題への対応 テーマ:42.ナショナルトラスト
講師:田村明氏(地域政策プランナー)
参加者:18名
○イギリス国土の変貌
イギリスの都市は産業革命以後、共有地(コモンズ)の囲い込み、不良住宅の発生自然の変化、歴史的遺産の喪失などの都市問題がおこった。
それに対する運動として、チャドウィックの「公衆衛生法」、エベネザー・ハワードの「田園都市論」、「ナショナルトラスト」の3つを主なものとしてあげることが出来る。
イギリスでは森林や牧草地などが共有地(コモンズ)としてあった。言わば村人の総有の土地である。ある意味では景観や通行権も総有である。
産業革命以後、土地の有効利用として共有地に対する囲い込みが行われ、都市部では不良住宅が発生したり、自然が変化したり、歴史的遺産が喪失したりして国土が変貌してきた。
○ナショナルトラスト創立の3人
このような国土の変貌をなんとか解決しようとした3人の運動家たちが居た。彼らは共有地(コモンズ)や歴史的建造物を保全するための活動を始めた。ナショナルトラストは国家の政策としてではなく個人の活動として始まった。
ロバートハンターは、コモン保存協会の弁護士として囲い込みの逆手をとった囲い込みをして、共有地(コモンズ)を保存しようとした。
オクタビア・ヒルは社会事業家であり婦人運動家でもある。彼女は病気を治すために旅行をしているときに太陽と居間にきれいな空気の大切さに気づき、不良住宅を買い取って改装して売るという運動をやった。
キャノン・ローンズリーはケズウィックという町の牧師で、湖水地方を守る会で活動した。
ピ一夕ー・ラビットの作者であるポタ一女史もその運動に共鳴した。
○ナショナルトラストの設立
1865年には共有地保存協会が設立され、1877年には古建築物保存協会が発足した。、民間の保存運動が起こったが1882年には古記念物保護法が出来た。
ロバートハンターはバーミンガムで演説し、コモンズを守るため土地の所有権を手に入れて保存する土地所有団体をつくった。
オクタビアヒルは「トラスト」の名称を提案した。
ラスキンが湖水地方にかかわり、オクタビアヒルにローンズリーを紹介した。
1894年、ウェストミンスター公爵が議長となりナショナルトラスト協会を設立した。公人が私人の立場でこのような運動に加わるのが面白い。
政府の力を借りないで国民の力でこのような運動を興し、1895年には法人として承認された。
○ナショナルトラストの活動
ナショナルトラスト協会はまず初めにオディナスオリョーの崖地を取得した。
建物では初めにアルフォリストン牧師館を10ポンドで取得した。
補修費の350ポンドは会員を募集して寄付を集めた。
この2つが基本となって、その後も共有地を取得し、 ハンターの没時には土地62ヶ所、会員700人までになった。
現在は所有土地2500平方キロ、会員300万人になっている。
また、セブンシスターズという海岸の景勝地などを買収した。
最近は管理費の増大で買い進めるのが難しくなっている。
このような活動によっていろいろなものが保全された。
公爵が財産を持ちきれないので共有地を庭として住んでいる例もある。
○法的関係と運営
設立から12年後の1907年にナショナルトラスト法が出来て、21州の不譲渡の宣言をした。運営費に困って財産を売ることがないよう自ら制限を課した。不譲渡は制約ではなく特権である。
保存誓約や寄贈、遺贈の非課税などの特権も得た。
現在では共有施設ではボランティアが執事となり事務所の管理をしており、グッズの販売や基金の管理をしている。
日本でもナショナルトラストの名で運動が行われ、田園調布では建築協定をして町並みを保存したりしている。
○意味と特色
ナショナルトラストは国民のためのオープンスペースの保全をすることにに意味があった。市民運動が基本で法律は税制と保障をしている。
国際的には、こういう運動の総称として各国にナショナルトラスト運動が起こったことが大きい。特色は政府に頼らない市民運動としてあり、政府が税制などで支援するという形になっている。
日本ではナショナルトラスト運動が遅れているが、住民がいても市民がいない、金儲けにならないと日本人はやらないなどの理由があるのではないか。
日本での組織は(財)日本ナショナルトラスト、(社)日本ナショナルトラスト協会と複雑になってしまった。
○会場から
・土地や建物などの財産は非課税となったが、会費の運用益はあるのか。 →非課税でも維持費はかかるので、金銭的には苦しい。 (社)日本ナショナルトラスト協会では会員が財産を所有している。
・京の町屋の保存に市民がお金を出したり保存に国がお金を出している例もある。
→日本ではお役所の補助はスズメの涙ほどしかない。
・田辺の天神崎で小学校の先生方などが買った岬を見てきた。天神崎トラスト運動の人に会いたかったが財団法人の特権があるので事務所があるかと思ったが個人が受け継いでいるようだ。誰も知らないのがショックだった。町には今でも開発賛成派と反対派がいる。
→岬の岩場は国有地だが岬を別荘の開発業者が買ってしまうのを阻止しようと富山さんという方が退職金をはたいて運動をおこした。
・文京区元町公園はナショナルトラストにならないのか。
→区役所は公園を生かしつつ民間の知恵をかりて払い下げで有効利用したいと言っている。なんとか区民の力で守れないのだろうか。
・ナショナルトラストは土地所有の法人なのではないか。日本では運営のプロが歓迎されないが組織体としてプロが必要なのではないか。
・ナチュラルビューティという思想があったのか。
→これからの講義でやりたい。湖水地方ではピーターラビットを書いたビアトリクス・ポターは農村の管理と財産運用をした。
・日本で田園風景を守ろうとすると行政体が運営団体になるくらい画期的にやらないと景観を守れない。
・ナショナルフットパスという歩ける通路がある。通行権の共有である。
・イギリスで市民運動が出てくる国民性はなぜあるのか。
→王政に対して市民戦争をしている歴史があるからなのではないか。
日本では一揆はあったが市民戦争にはならない。
・会員300万人はすごい。会費を払うほかに活動しているのか。
→活動はあまりやっていないようだ。
・アングロサクソンは植民地をベースにこのような活動が出来たのではないか。
→イギリスの富が産業革命を達成したしたという面はある。
・ナショナルトラスト運動を政府の側はどのように評価していたのか。
→市民が地主に対して戦いを挑んでいるという面もあり、政府としては修正しなければいけない政策もあり静観していた。後には政府も後押しをした。
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